父滅の刃-消えた父親はどこへ―/樺沢紫苑著/感想

樺沢紫苑氏の新刊「父滅の刃ー消えた父親はどこへー」を読んだ感想をお伝えします。

なお、この本は「父親はどこへ消えたか-映画で語る現代心理分析-」に、「はじめに」「第7章」「第8章」「第9章」を新たに増補したものになります。よって、今回は「はじめに」「第7章」「第8章」「第9章」の部分について感想をお伝えします。

その他の感想につきましては、こちらで述べていますので、ご覧ください。

全体的な感想

「父性不在」「父性消滅」「父性不要」「男性不要」が進行している。という切り口で、新たに加えられた映画や漫画についての考察が述べられています。

映画好き、漫画好きの方にとっては、「なるほど。そういうことなんだ。」と感じることが多いと思います。今話題の「鬼滅の刃」についても著者の愛が伝わってきて、私も読んでみようかと思いました。

逆に私は映画をあまり観ません。そんな私でも、「子育て」や「父親の役割」についての記述では、気付きを得る内容が多く、これからの参考にしたいと思いました。

「父」「父親」「父性」という言葉にピンときた方、良き父を目指したい方、リーダーシップを発揮したい方、自己成長したい方は必読だと言えます。

最後には、コロナ危機の時代に、私たちはどういう姿勢で生きなければならないのかに触れられています。これには、思わず「そうだよな。」と心の中で呟いてしまいました。

気付きを得た内容

1 「父性」と「母性」についての記述まとめ

父性:「決断する」「白黒つける」「規範を示す」「断ち切る」「自分の意志をつらぬく」「裁く」「手放す」「社会に出す」

母性:「赦す」「受け入れる」「抱え込む」「包み込む」「家にとどめる」

2 父親が「父性」を担当し、母親が「母性」を担当する

父親が「叱り」、母親が「なだめる」「やさしく接する」「フォローする」ことが、子供に対して養育的に働きます。

p.359

この役割が逆転すると、子供の精神が不安定になってしまう。

私はこれを読んで、子供がワガママを言った時、母親、祖父、祖母は優しくても、父親は叱っても良いのだと思いました。父親は「規範を示す」必要があることを意識しようと思っています。

3 「父性」が「母性」に負けると、子供は社会に出ていこうとしなくなり、「ひきこもり」の原因となる

4 「草食男子」で良いと思っていないか?

「男なんか頼りにならない」「男なんかいらない」「私たち女だけでやっていける」。・・・『アナ雪』は・・・「父性不要」「男性不要」を打ち出しているのです。

p.351

「草食男子でも全然OK」という作品がこれからも量産されるとしたら、「あるべき姿」として無意識のレベルに刻まれ続けていくでしょう。

p.362

といった具合に、最近のディズニー映画に対する著者の考察は厳しめです。

私は『アナ雪』を観て、「今は白馬に乗った王子様が、ヒロインを助ける時代でもないのか。女性も、男性が何もかも助けてくれて、どんな時も頼りになる存在とは思っていないよな。」と感じました。

そして、次にようなメッセージを感じ取りました。

①女の子に対して:「白馬に乗った王子様はいない」という現実を教えるメッセージ。

②男の子に対して:「強くなければならない。かっこよくなければならない。すべて男が解決しなければならない。という様に肩ひじ張らなくて良いんだよ」というメッセージ。

しかし、著者が指摘するように、これが「あるべき姿」で良いのか?と考えさせられました。女性が「男なんか頼りにならない」と諦め、男性は「草食男子でも全然OK」と開き直る。

私は家族の中で、「父性」を発揮した存在でいたいし、子供にとっても「乗り越えるべき対象」でいたい。

結婚したところで、「家事をしない(家事をしたとしても料理をつくれない)」「育児をしない」「飲み歩いている」「不倫をする」「話を聴かない」「仕事をすれば良いと思っている」。これでは世の中の風潮が、「男なんか頼りにならない」「男なんかいらない」「私たち女だけでやっていける」。となっても仕方ないかもしれません。

そうだとしたら、そう思われないように頑張るしかありません。家族の中で「頼りになる存在」でいたい。そのためには、「草食男子でも全然OK」というメッセージに甘んじてはいけないと思いました。

父性を発揮した存在になるためにも、「決断する」「白黒つける」「規範を示す」「断ち切る」「自分の意志をつらぬく」「裁く」「手放す」「社会に出す」を意識したいところです。

5 「父性消滅」に対抗するにはどうすれば良いのか?

最後のまとめで、結論が述べられています。「父性」を発揮する存在がいない状況で、私たちはどのように生きていけばよいのか?

私は「そうだよね。」という感想を持ちました。

おわりに

映画や漫画をとおして、「父性」「母性」「心理描写」などが語られているこの本。少し批判的に読むと、映画や漫画の心理描写を、現実の事のように語られていることに疑問を感じてしまいます。普通の人が書いた本であれば、「だってそれ作り話でしょ?」と言いたくなってしまう。

しかし、著者は精神科医であるため、その心配が払拭されているのです。精神科医の目から見ても、現実的な心理描写だと判定されているということだと思います。ですから、私は心配しないで素直に読みました。

さて、本を読むのはある意味「生き方」を変えるためです。今よりもっと良い人生を手に入れるためです。

「父滅の刃-消えた父親はどこへ-」では、「父性消滅」の時代の生き方が書いてあります。つまり、これからの「生き方」が書いてあるのです。

世の中の多くの人と同じ生き方をするか。本書を読んで、「父性消滅」の時代の生き方の気付きを得るか。

生き方を変えるのはいつだってあなた次第です。

<参考文献>
父滅の刃-消えた父親はどこへ-