専門家になる方法
関係性を理解する
専門知識を有する専門家とは、その分野に通底する関係性を理解している人です。
混沌とした複雑な状態の中から、隠れた本質や共通する特徴を見抜ける人。つまり、複雑な物事を単純に表現できる人と言い換えられるでしょう。
Learn Betterという本では、以下のように書かれています。
パブロ・ピカソはわずか七本の描線で牛をスケッチしたことで知られる。…ビートルズの名曲の余分なものをすべてそぎ落とした簡潔さを考えてみればよい。ビートルズは複雑な音楽をきわめて単純なものに見せている。
物事の関係性や構造について考えることをシステム思考と言います。
では、どうすれば関係性を理解出来るようになるのでしょうか?
1990年代に行われた実験で、1つのグループにはフリースローのみを練習させ、別のグループには複数のシュートを練習させた。
結果は
複数のシュートを練習したグループのほうが根本的なスキルをより深く理解し、はるかに高い効果を上げた
のです。
これは、学習分野についても同じ事が言えます。
複数の分野を混ぜ合わせて練習したり、さまざまな例を織り交ぜたりすることによって、基底にある関係性への理解が深まる。体系への理解が進み、場合によっては四十パーセントも成果が向上する。
たいていの人が経験する練習や具体例の多様性ではとうてい不十分なのである。深部にあるつながりに気づくためには膨大な具体例が必要だ。
とされています。
では、何故複数の分野を混ぜ合わせて練習することが専門知識の習得につながるのでしょうか?
それは、アナロジー(類推)の発想。
つまり、多様な具体例に出会うことで、過去の経験をデータベースとして、私達は物事を比較できるようになります。これが相違点と類似点に注意を向けることにつながり、基底にある関係性に気づけるようになるのです。
映画監督のクエンティン・タランティーノは、ある時、記者からどうやってプロになったか聞かれ、こう言ったそうです。
生活から他のすべてを排除して一つのことだけに集中したら、詳しくなって当たり前だよ。
何かを極めるためには、その分野に何通りもの方法で取り組む必要があります。
ただの繰り返しではありません。その分野に対してさまざまアプローチで取り組むことが重要です。
<参考文献>
Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ