理想に反する行動も、軌道修正できれば問題ない

どうにでもなれ効果で、自棄(やけ)になってしまう

ダイエット中に少し間食するつもりが、沢山食べてしまい、投げやりになって、更に食べてしまう。

勉強しようと思っていたのに、だらだらスマホやテレビを視聴してしまい、投げやりになってそのまま続けてしまう。

あなたはこういった経験がないでしょうか?

この事を心理学では「どうにでもなれ効果」と呼びます。

ケリー・マクゴニガル氏の著書『スタンフォードの自分を変える教室』では、

はめを外して、落ち込んで、さらにはめを外すという悪循環

と説明されています。

自分を責めすぎると、モチベーションや自己コントロールの低下に繋がる

ある実験で、体重に気をつけている女性を集め、甘い物を食べさせました。1回目は普通に食べてもらいます。

1つめのグループには「あまり自分に厳しくしないように。誰だって時には自分を甘やかすこともある。」と伝えました。

もう片方のグループには何も伝えませんでした。

その後、また甘い物を食べてもらい、食べた量を量りました。すると、、、、、

なぐさめてもらった女性達の食べた量は28gで、なぐさめてもらえなかった女性達は70g近く食べていたそうです。

なぐさめてもらえなかったグループには、「普段は気を付けているけど、もう今日は甘い物を食べてしまったから、どうでもいいや。」という心理が強く働いていることが分かります。

逆に、なぐさめてもらえたグループは投げやりになる「どうにでもなれ効果」が和らいでいます。

私達は自分に厳しくすることが唯一の自己コントロール法だと考えがちです。しかし、自己批判はモチベーションや自己コントロールの低下に繋がるという研究結果が出ているのです。

罪悪感を抱くよりも、自分を許した方が、失敗の責任は自分にある事を素直に受け入れられるのです。自分の失敗の責任を認めることで、他人の意見やアドバイスに耳を貸しやすくなります。結果的に失敗から学ぶようになり、やけを起こしにくくなるのです。

いつもここから。気が付いた時が最短。

今度やけになりそうになったら、「気が付いた今この瞬間が、人生において一番早いんだ。」と考えましょう。

例えば、あなたがダイエットをしているとして、以下の場合を考えてみてください。

A:食べない      B:間食する  

①■—————–A——————-■
スタート   今     ゴール
②■——–B——■P●—————–A——————-● 
スタート →     今          →    ゴール
③■—————————-B——————————-
スタート       今

上記のとおり、スタートからゴールまでの総距離は、①の方が短いので、私達はA(食べない)という行動は最初から最後まで、Aであるべきだったと考えてしまいます。

だから、理想に反する行動Bを少しでもしてしまうと、もう意味がなくなったと極端な発想に陥ってしまうのです。

朝から晩まで間食はするべきではなかったのに、もう今日はお菓子を食べてしまった(B)ので、どれだけ食べてもいいやと考えてしまう傾向にあります。

でも、Bの行動を続けている限り、③のように一生ゴールにはたどり着きません。いかに早くBをやめて、Aの行動に戻るかが重要なのです。

「あー、あの時食べていなければなー。」と嘆いたところで、甘い物に一度も手を出さなかった①という現実は、もはや存在しないのです。

ですから、甘い物を食べてしまったけど、失敗に気が付いて、食べるのをやめた②が、理想の自分になる最短ルートなのです。最初から最後まで食べないはずだったのにと、理想に囚われるのはやめましょう。

「あー、もっとこうすれば良かった」とか、「あー、何々しなければ良かった」などと考えると、自分を追い込んで更にやる気が低下してしまいます。

「あっ、食べ過ぎた!」と思ったら、今この時点から食べないのが理想の自分に近付く最短ルートだったんだと考え、食べるのをやめましょう。

「あっ、時間を無駄にした!」と思ったら、今から始めるのが理想の自分に近付く最短ルートだったんだと考え、やるべき事に取り掛かりましょう。

1番陥ってはいけないのが、

「もうこれだけ食べてしまったんだから、今日はいっぱい食べちゃおう。」

「もうこれだけ時間を無駄にしたんだから、今日はもう勉強しない。」

「もうこれだけお酒を飲んだんだから、今日は好きなだけ飲もう。」

といったパターンです。

間食をしなかった現実は存在しないのです。時間を無駄にしなかった現実は存在しないのです。飲酒しなかった現実は存在しないのです。

どんなに食べてしまおうが、どんなに時間を無駄にしようが、どんなに飲酒してしまおうが、正しい行動に遅すぎることはないのです。

食べてしまったこと、スマホやテレビを見てしまったこと、飲酒してしまったこと。全てひっくるめて、理想の自分に近付く最短ルートを通って来たのです。たとえ理想から遠のく行動をとったとしても、それに気付いて正しい行動を始めたなら、それが理想を実現する最短のルートだったのです。

今から正しい行動を始めましょう。

<参考文献>

スタンフォードの自分を変える教室